悪夢の果て シリーズ・闇からの声赤川 次郎
光文社 刊
発売日 2006-07-12
悪、に流されていく悪 2006-08-10
赤川氏が最近特に力を入れて書かれているのが、この「闇からの声」シリーズです。(私はノベルスの字の並び方が嫌いなので文庫まで待ちました。)
赤川次郎と言えば、ユーモアとウィットに富んだライトなミステリー、というのが大まかな世間的評判だと思われますが、これは、そういった読後感を期待していると、もしかして大事なものを読み落としてしまうかも知れません。
表題作「悪夢の果て」は、終戦間近の日本の、壊れていく人間たちの脅威、逆らえない人間の恐怖を、現代の主人公の視点によって生々しく描きます。
最後の「雨」も、恐怖政治に対する赤川氏の警鐘、という点では表題作に似てはいますが、登場人物の中に、それに気付く者、眼の覚めない者とが混在していて、読者は自然と冷静さを求められているように感じます。
「凶悪犯」「後ろ姿の英雄」の二本の方が、現代の本当にあり得る設定であるだけに、私には胸の痛い作品でした。経営者の身勝手による左遷や失業、核家族の教育を助ける者の真の顔…。
これらは、訴える作品です。短編の中の登場人物の小さな叫びに、気付かないとあなたもいつの間にか悪に流されてしまうかも知れない、と言われているような気がしました。
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